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用途区分 読了 約9分 民泊オーナー・運営代行法人さま向け 公開 /更新

あなたの民泊は「特定防火対象物」?
用途区分(5)項イをやさしく解説

結論から

不特定多数の人が出入りする建物は「特定防火対象物」とされ、民泊はホテル・旅館などと同じ消防法令別表第一の(5)項イに該当しやすい区分です。特定防火対象物に当たると、点検結果の報告は「3年に1回」ではなく「1年に1回」と頻度が上がります。ただし、すべての民泊が一律に特定防火対象物になるわけではありません。この記事では「特定」と「非特定」で何がどう変わるのかを、図と表で並べます。

先に結論

住宅宿泊事業法の届出住宅は、原則として消防法施行令別表第一(5)項イ=特定防火対象物(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)として扱われます(消防予第330号)。例外は「人を宿泊させる間、住宅宿泊事業者が不在とならない旨」を届け出て、かつ宿泊室の床面積の合計が50㎡以下のときだけで、この場合は住宅として扱われます。分譲マンションの一室のように届出住宅が建物の一部に存する場合は、届出住宅ごとに用途を判定した上で、棟ごとに判定します。

消防の手続きを調べていると、必ず出てくるのが「特定防火対象物」という耳慣れない言葉です。「ウチの民泊はそれに当たるの?」「当たると何が変わるの?」——ここをあいまいにしたまま進めると、点検や報告の頻度を取り違えます。この一語で、毎年やることの量と払う費用が変わります。

この記事では、特定防火対象物とは何かをかみくだいたうえで、民泊がホテル・旅館と同じ用途区分(5)項イに該当しやすい理由、特定防火対象物と非特定防火対象物の違い、そして報告頻度の差(特定=1年に1回/非特定=3年に1回)の順で見ていきます。全体像を先に押さえたい方は、民泊の消防・防災 完全ガイドもあわせてご覧ください。

1「防火対象物」と「特定防火対象物」とは?

まず大前提として、消防法では建物などのうち一定のものを「防火対象物」と呼び、火災に備えた消防用設備等の設置・点検・報告の対象にしています。その防火対象物は、用途(その建物が何に使われているか)によって細かく分類されており、その分類の一覧が「消防法施行令 別表第一」です。

この別表第一に並ぶ用途のうち、不特定多数の人が出入りする・火災時に逃げ遅れの危険が高いとされる用途を、特に「特定防火対象物」と呼びます。逆に、特定に当たらないものを「非特定防火対象物」と呼んで区別します。分ける理由は単純です。建物の間取りを知らない人は、火災のとき逃げ遅れやすい。だから、そういう人が多く出入りする建物ほど手厚く管理させる、という発想です。

  • 特定防火対象物:ホテル・旅館、飲食店、物販店、病院など、不特定多数が利用する用途。
  • 非特定防火対象物:共同住宅・事務所・倉庫など、利用者がおおむね特定される用途。
  • どちらに分類されるかで、設備の要件や点検結果の報告頻度などが変わります。
覚え方はシンプルです。「知らない人が大勢出入りする建物ほど、厳しめに管理する」——これが特定防火対象物という考え方の根っこです。民泊はまさに、間取りを知らないゲストが入れ替わり泊まる建物です。

2民泊が用途区分(5)項イに該当しやすい理由

別表第一では、用途を(1)項から(20)項まで番号で整理しています。そのなかで宿泊にかかわるのが(5)項で、さらに「イ」と「ロ」に分かれます。

(5)項イ = ホテル・旅館・宿泊所等

(5)項イは、ホテル、旅館、簡易宿所、宿泊所など、不特定の人を宿泊させる施設の区分です。これは特定防火対象物にあたります。家主が不在で、知らないゲストが入れ替わり宿泊する家主不在型の民泊は、生活の場というより“宿泊サービスの施設”としての色合いが濃く、この(5)項イに該当しやすいと考えられます。

(5)項ロ = 寄宿舎・下宿・共同住宅等

いっぽう(5)項ロは、寄宿舎、下宿、共同住宅など、おおむね特定された人が継続的に住む区分で、こちらは非特定防火対象物です。家主が同居し住まいの延長として一部を貸す家主居住型の小規模な民泊などでは、こちらに近い扱いになる可能性もあります。

民泊で実際に出てくる区分は、この2つに(16)項イ(複合用途)を足した3つです。マンションの1室で民泊をすると、住戸部分は(5)項ロ、民泊部分は(5)項イで、建物としては両方が混ざった(16)項イになる、という具合です。3つを並べると次のようになります。

区分 代表的な用途 特定/非特定 民泊でのあてはまり方(目安)
(5)項イ 旅館・ホテル・宿泊所 特定(報告は1年に1回) 家主不在型の戸建て・一棟。居住型でも宿泊室の合計が50㎡を超えると、こちらで見られるのが一般的
(5)項ロ 寄宿舎・下宿・共同住宅 非特定(報告は3年に1回) 民泊をしていない共同住宅そのもの。居住型で宿泊室50㎡以下なら、そもそも一般住宅の扱い(住宅用火災警報器の範囲)
(16)項イ 特定用途を含む複合用途 特定として扱う(報告は1年に1回) マンション1室や、1階店舗+上階民泊など。民泊部分が建物の10%以下かつ300㎡未満なら民泊部分だけで設備を見る整理が一般的で、超えると建物全体

表の中で一番見落とされるのが、居住型・宿泊室50㎡以下の行です。ここに収まるなら消防法上は一般住宅のままで、自火報も誘導灯も出てこない。消防庁の通知で示されている整理ですが、「宿泊室」に何を含めるか(廊下や浴室は入らない等)の数え方は消防本部で確認してください。50㎡を1㎡でも超えると話が(5)項イに飛ぶので、居住型で始める方は図面の面積を先に足し算しておくのが順番です。

「民泊だから一律に(5)項イ」ではありません。イとロのどちらに分類されるか、また建物全体がどの用途で評価されるかは、形態・規模・実際の使われ方をもとに、消防法令に基づいて個別に判定されます。下の図はあくまで“該当しやすさ”のイメージです。
図解 ① | 別表第一 (5)項「イ」と「ロ」のわかれ道
別表第一 (5)項 = 宿泊にかかわる用途 (5)項 イ 特定防火対象物 ホテル・旅館 簡易宿所・宿泊所 不特定多数が出入り (5)項 ロ 非特定防火対象物 寄宿舎・下宿 共同住宅 など 住む人が特定される 家主不在型の民泊は「イ」に該当しやすい (最終的な区分は形態・規模・使われ方で個別判断)
別表第一(5)項は「イ=ホテル・旅館等(特定)」と「ロ=共同住宅等(非特定)」に分かれます。家主不在型の民泊は(5)項イに該当しやすい一方、最終的な区分は個別判断です。
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3特定防火対象物と非特定防火対象物、何が違う?

特定に入ると、何が変わるのか。細かい違いはいくつもありますが、オーナーの手間と財布に直結するのは点検結果の「報告頻度」です。点検そのもの(機器点検・総合点検)の周期に加えて、その結果を管轄消防へ提出する報告の間隔が、特定と非特定で異なります。

特定防火対象物 と 非特定防火対象物 の主な違い(イメージ)
比較する点 特定防火対象物 非特定防火対象物
代表的な用途 ホテル・旅館、飲食店、物販店、病院など(民泊は(5)項イに該当しやすい) 共同住宅、寄宿舎、事務所、倉庫など
利用する人 不特定多数が出入りする おおむね特定された人が利用する
点検結果の報告頻度 1年に1回 3年に1回
管理の考え方 逃げ遅れ防止の観点から、より手厚く 相対的にゆるやかな間隔

表のとおり、特定防火対象物では点検結果の報告が「1年に1回」、非特定防火対象物では「3年に1回」が基本です。同じ「報告」でも、特定なら毎年です。3棟あれば毎年3回。しかも期日の月は棟ごとにずれるのが普通なので、棟数が増えるほど管理の重さが変わります。報告書を誰がいつ出すのかは、点検結果報告書は誰がいつ出す?でくわしく解説しています。

報告以外にも、特定に入ると閾値が下がるものがいくつかあります。(5)項イと(5)項ロで並べると、差が見えやすい。数字はいずれも消防法施行令上の一般的な基準で、建物の構造や消防本部の運用で前後します。

項目 (5)項イ(特定) (5)項ロ(非特定)
点検の周期 機器点検6ヶ月・総合点検1年(年2回) 同じ(年2回)
点検結果の報告 1年に1回 3年に1回
自動火災報知設備 延べ面積にかかわらず必要(300㎡未満は特小で可) 延べ500㎡以上
誘導灯 原則すべてに必要 地階・無窓階・11階以上など
消火器 延べ150㎡以上 延べ150㎡以上
防火管理者の選任 収容人員30人以上 収容人員50人以上
防火対象物点検(年1回) 収容人員300人以上など特定一階段等防火対象物は30人以上 対象外

小さな民泊で効いてくるのは、上から3行目までです。自火報が「面積にかかわらず必要」になるのが特定の一番大きな変化で、費用もここで決まります。防火管理者や防火対象物点検は収容人員30人・300人が線なので、戸建て1棟や1室の民泊ではまず出てきません。収容人員の数え方は民泊の収容人員の数え方で、防火対象物点検と消防設備点検の違いは防火対象物点検と消防設備点検の違いで整理しています。

図解 ② | 点検結果の報告頻度のちがい
特定防火対象物 1年に1回 報告 1年 2年 3年 4年 報告 報告 報告 報告 非特定防火対象物 3年に1回 報告 1年 2年 3年 4年 報告 報告 3年間隔
特定防火対象物は毎年(1年に1回)、非特定防火対象物は3年に1回が報告の基本周期です。点検そのものの周期とは別に、報告の間隔がこのように変わります。
「点検の周期」と「報告の周期」は別の話です。機器点検・総合点検をいつ行うか(点検周期)と、その結果をいつ提出するか(報告周期)は、相談の場で一番よく混ざる話です。点検の回数や種類については点検は年に何回?もあわせてどうぞ。

4特定だと分かったら、何を整える?

自分の物件が特定防火対象物に当たりそうだと分かったら、やることの全体像は「設置 → 点検 → 報告」の流れに整理できます。報告が毎年来る分、最初の設計を外すと、その分の手間を毎年払い続けることになります。

1

用途・規模に応じた設備を設置する

消火器・誘導灯・自動火災報知設備・非常用照明など、用途区分と規模に応じて、要るものを要る数だけ備えます。特定に入ると、求められる設備が増えることがあります。

2

法定の周期で点検する

設置後は、機器点検・総合点検で機器が動くかを定期的に確かめます。不備が出れば、直すところまでがセットです。

3

管轄消防へ報告する(特定=毎年)

点検結果を管轄消防へ報告します。特定防火対象物は1年に1回。期日は物件ごとに違うので、棟数が増えたら手帳や記憶では追えません。

よく必要になる設備の例

特定防火対象物となる民泊でよく出てくる設備です。要否や数量は物件ごとに変わるので、顔ぶれを知る程度に見てください。設備の全体像は民泊に必要な防災設備まるわかりで整理しています。

消火器 初期消火の基本。設置位置・本数に決まりがあります。
誘導灯 避難経路を示す灯り。停電時も出口へ導きます(消防法)。
自動火災報知設備 煙や熱を感知して火災を知らせる設備です。
専門家からの補足「避難まわりの灯り」もよく混同されます。誘導灯は消防法に基づく消防用設備で点検・報告の対象、いっぽう非常用照明は建築基準法に基づく建築設備で、根拠となる法律も担当も異なります。特定防火対象物では誘導灯などの要件が手厚くなりやすく、ここを取り違えると頼む先から間違えます——違いは誘導灯と非常用照明はどう違う?で整理しています。
写真:(5)項イの民泊に設置した誘導灯・自動火災報知設備の実例 後日、実写真に差し替え

5自分で見極めるのが、なぜ難しいのか

ここまで読むと「(5)項イなら特定、毎年報告。話は簡単だ」と思うかもしれません。ところが現地に行くと、そう簡単に済まない物件のほうが多い。自分で見極めようとして引っかかるのは、だいたい次の3つです。

  • 建物全体で評価される:1階が店舗、上階が民泊…のように複数の用途が混ざる「複合用途」だと、建物全体で判定するので、民泊部分だけ見ていても答えが出ません。
  • イ/ロの線引きが微妙:家主居住型か不在型か、宿泊させる人数や規模など、形態によって区分が変わり得ます。
  • 報告の期日管理が重い:特定なら毎年。複数物件を持つと、棟ごとに違う期日を抜け漏れなく回し続けるのが大きな負担になります。

要は、手こずるのは「特定か非特定か」という言葉の意味ではなく、自分の物件をその区分に正しく当てはめ、毎年の報告まで取りこぼさずに回し続けることです。区分を一つ読み違えると、設備が余るか、足りないか、報告が抜けるか。どれかが起きます。報告を怠った場合のリスクは消防点検をしないとどうなる?で事実ベースに解説しています。

だからJSIは「まるごと」JSIは、区分の見極めから設備の設計・設置、点検、そして管轄消防への報告までを一社で完結させ、特定なら毎年めぐってくる報告の期日管理まで継続して担います。複数物件もまとめてお引き受けするので、オーナーさまは基本的に何もしなくて大丈夫です(行政書士が必要な手続きは提携の専門家と連携します)。

6よくある質問

Q家主居住型で宿泊室が50㎡以下なら、特定防火対象物にはなりませんか?
その条件に収まる住宅は、消防法上は一般住宅として扱われる整理が一般的です。必要なのは住宅用火災警報器で、消防用設備等の点検・報告は原則出てきません。ただし「居住型」の判定(家主が本当に住んでいるか、外出の頻度)と「宿泊室」の数え方は管轄消防が個別に見ます。1階を店舗に貸している、といった建物全体の事情があれば話は別です。
Qマンションの1室で民泊をすると、建物全体が特定防火対象物になりますか?
建物としては(16)項イ(複合用途)になりますが、民泊部分が建物の延べ面積の10%以下かつ300㎡未満なら、設備は民泊部分だけで判断する整理が一般的です。共用部や他の住戸に新しい設備を足す話にはなりにくい。この線を超えると建物全体で見直しになり、費用の桁が変わります。詳しくはマンション一室の民泊と防災で。
Q特定防火対象物になると、防火管理者を置かなければいけませんか?
特定用途で防火管理者が要るのは収容人員30人以上からです。戸建て1棟や1室の民泊は、宿泊定員と従業者を足しても30人に届かないことがほとんどで、選任は不要な場合が多い。ただし一棟丸ごとの物件や複数室を持つ建物では届くことがあるので、防火管理者は民泊に必要?で算定の考え方を確認してください。

根拠にした一次資料

この記事の数値・条文名は、下記の法令原文・通知・統計を実際に開いて確認したものです(最終確認 2026年9月27日)。記載のない数字は載せていません。

  1. 消防法施行令(e-Gov 法令検索)
    別表第一(5)項イ「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」/(5)項ロ「寄宿舎、下宿又は共同住宅」/第4条の3第2項(別表第一(16)項の防火対象物の部分は、その用途の一の防炎防火対象物とみなす)
  2. 住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(平成29年10月27日 消防予第330号・PDF)
    届出住宅は原則(5)項イ。「不在とならない旨」の届出+宿泊室の床面積の合計50㎡以下のときだけ住宅扱い。届出住宅が一部に存する共同住宅等は、届出住宅ごとに用途を判定した上で棟ごとに判定する
  3. 消防法施行規則(e-Gov 法令検索)
    第31条の6第3項第1号((5)項イは報告1年に1回=特定防火対象物としての扱い。(5)項ロ等は3年に1回)
  4. 住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)(令和6年12月24日 最終改正・PDF)
    2-2.(2)③ 消防法令との関係について(消防法令や市町村の火災予防条例の適用の有無は、届出前に管轄消防署に確認する必要がある)

法令・通知・告示は改正されます。リンク先の最新版と、管轄消防署の運用をあわせてご確認ください。JSIは消防設備士の有資格者が運営していますが、本ブロックは出典の提示であり、個別物件についての確定的な法的判断ではありません。

本記事は一般的な情報提供で、個別の物件についての確定的な法的判断を保証するものではありません。特定防火対象物への該当や用途区分・報告頻度は物件ごとに異なり、法令改正等で変わり得ます。正確な情報は管轄の消防署または専門家にご確認ください。
民泊の防災を、まるごと。

まず「特定か、非特定か」を確かめるところから。

用途区分の見極めも、設備の設計も、点検も、毎年めぐってくる報告も——ぜんぶJSIにおまかせ。オーナーさまは、基本的に何もしなくて大丈夫です。まずは無料で、あなたの民泊が特定防火対象物に当たるかを診断します。

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